「運命の子 トリソミー
短命という定めの男の子を授かった家族の物語」
著者:松永正訓
子供が県外に出るその日、新幹線の中で読んだよ。母親として思うところが多すぎて、夢中になって読めた。短命とわかっている子供を産み、育てる…親としてどういう選択をするのか…。
2013年第20回小学館ノンフィクション大賞受賞作。
染色体が増えて生まれるトリソミー
21トリソミーがダウン症、ということすら自信を持っては言えない位の知識。他にもトリソミーがあり、この本に出てくるのは13トリソミー。
一般的に心臓の奇形や発達の障害で、ほとんどが1ヶ月~1歳までに死亡する。
著者はお医者さんで、この作品はノンフィクション。障害児を受け入れるとはどういうことかを深掘りしていく。直接、少しずつ家族や兄妹に質問したりして、短命であり自分の力では生きられない子供達を取り巻く「家族」の思いをひろっていく。
ニワトリは身近にトリソミーの知り合いはいない。ただ、かなり小さく生まれていろいろな障害を持った親族はいるから、大変さは聞くことがある。しかし聞くだけで、体感としては育てているわけではないからね。親の思いや大変さっていうのは計り知れないものがある。
家族にとっての幸福とは
印象的だったのは、13トリソミーを持つ朝陽(あさひ)くんのお父さん。まだ生後数ヶ月のあさひくんを、生命に関わるコード等を外し散歩に出たりする。口唇口蓋裂もあり、見た目も普通と違う…お母さんは口の亀裂部分にバンドエイドをして隠す気持ちもあったりして、子供への深い愛情もありながらも悩む姿に共感。でもお父さんは全て感覚で、あさひくんを受け入れている感じ。
お母さんの穏やかな姿もすごい。あさひくんのほどんどの生活は母親がケアしている。著者がそれぞれの思いを定期的に聞いていて、家族とは幸福とは…と考えさせられる。
自分ならどうするだろうか…と思っても本当にわからない。その立場にならなければ、どの言葉も上辺のもので、言葉にする事すらはばかられる。
ただ母として、つきっきりの生活は大変だろうと思うことだろうか。あさひくんにはお兄ちゃんもいて、著者はお兄ちゃんの様子や思いも少しずつ聞いている。まだ幼く、しっかりとした意見は聞けないが、行動にもいろいろ現れていて抱きしめたくなる。
あさひくんは「家族の幸福とは何か」を教えてくれる運命の子…という意味のタイトルなのだろう。
命の選別
「出生前診断」ができたらどうするのか。産まないことを選択するのか、理解して産むのか。
この本では、あさひくん以外の重度障害を持つ家族の話しも出てくる。短命ですぐ亡くなることがわかっていて産んだ人…シングルマザーで育てる人…。
例えば自分が妊娠して、トリソミーとわかってまだ中絶できる期間にいたら自分はどうするだろうか。
以前テレビで、ダウン症とわかっていて中絶できる期間に悩み続ける夫婦の特集を見たことがある。
父親は産んでほしい、母親は産みたくない、でケンカや話し合いを繰り返し、母親は自殺したくなる程まで悩んだ末に産むことを選んだという内容だった。
今ここでニワトリが意見を言ったとしても、しょせん体験したことでもない。
産まれてきた子供とその親が、できるだけ幸福に生活できることを願うのみではないだろうか。
願うだけではだめだな、そんな社会にしたいと活動するとか、手伝うとか動きが必要だ。
ニワトリも40代、子供を産んでわかったけど、子供に関わる仕事って良いよね!ニワトリは事務系だから保育士とか資格取っとけば良かったかな~とか思ったりするね。
子供がいるいないに関わらず、自分の知らない世界があるということを知るよい本でした!
