「サラバ」上下巻
著者:西加奈子
軽快な語り口が楽しい
一人の少年が姉・母・父や人生で関わっていく人々を、冷静かつリズミカルな口調で語っていく。少年期のエジプトでの体験、その後日本へ戻ってからの生活。
とにかく姉への感情が面白い。孤立を深める姉と、何の問題もなく空気を読みながら難なく毎日を過ごす、主人公「あゆむ」。対照的な二人がどう大人になっていくのか。
学校でのヒエラルキーや、家庭内のゴタゴタ。そして友情。細かく表現されているのにするっと読める1っ冊。
直木賞受賞作、納得!作者もエジプトで過ごしたことがあるそうなので、そういう経験が生かされた作品なのでしょう。
家族のありかたを考えさせられる
どうしても母親という目線で見てしまう。子供がこんなこと考えながら、自分を見てたらいやだなと思った。でも個性ってあるわけだから、家族にも相性はあると思う。
前半はしっかりした主人公「あゆむ」が家族のことで大変なことがありながらも、毎日の生活をそつなくこなす楽しい話のようだが、後半は陰りを見せ始める。
子供にとって、親の離婚はかなりのダメージがあると思う。離婚でなくても親の不仲は相当きついものだろう。子供って意外に真実を知っていたり、逆に全く見当違いのことで悩んでいたりするよね。そしてそれを親に言うことはできない…。
自分も親は離婚していないが、子供心にいろいろ思うことがあったり、大人になってやっと消化できたりする。
子供の心の動きがよく表現されていてびっくりする!
「あなたが信じるものを誰かに決めさせてはいけないわ」
姉が弟に言う言葉。結局は自分で考え、進まなければならない。
共感できる人も多いのではないだろうか。
個人的な意見だが、私は人生に意味があるんだ、生まれたことに意味がある!とは思わないタイプかな。災害で産まれてすぐ無くなる人もいるし、意味はなくても生きるしかない!って思っている。
自分が信じるものは何か。後半は人生を考えさせられる。もう一度読み直して、深く理解したくなる本だ。