「それ以上でも、それ以下でもない」
著者:折輝真透
ナチス占領下のフランスでの話しとあるので、海外の本かと思ったら違った。翻訳本ではなかった。
ニワトリは海外の本も好きだ。日本と違う世界観があって、世界は広いんだな~と感じるから。
いったい誰が彼を殺したのか
匿われていたレジスタンス(占領下の置かれた国における抵抗運動)の男が、何者かによって殺される。
小さな村で唯一の神父・ステファンは困窮する村が混乱することを避けるため、事件の隠蔽をはかる。
誰が殺したか、ということは読み進めていてもそんなに気にならない。どちらかというとナチス占領下での一般市民の生活ぶりが描かれていて、戦争の時代人間の心理はこんな風になるのかもしれないな…ととても実感できるものになっている。
小さな村での、何もかも知っている人間関係
ニワトリは地方の県の、更に田舎出身だから小さな村での人間関係がけっこう分かる。
この本でも、誰の子供で祖父はどんな仕事で、途中から村に来た人、どんな動きをしているかを皆が良く知っている。隠そうとしても周りに気付かれるのだ。
普段と違う車が停まっている、夜いつもいない等本人の前では言わなくても、影でみんなこそこそ言っていたりする。ニワトリの母は今も田舎暮らしで、話題は「昔はあの人はどんなことをしていた」とかそういうことが多い!人間が少ないと、どうしてもそうなるのだろう。
ステファン神父はいい人なのか?
本を読み終わるまで、これが気になってしょうがない。
神父という立場、皆に信頼され告解(誰にも言えない秘密を告白する)という村の人達の秘密を聞いてしまう立場。村の人のためにと殺人を隠蔽するが、本当にそれだけの理由なのか。
戦争下、隠蔽したことで村は守られたのか。神父は何度も窮地に陥る。
所々に神父さん、実は…?と疑いたくなる部分も入っていたりして。
とにかくステファン神父が小さな村を守るために、危険を顧みず動く姿が印象的。
いろんな本を読んできたが、人間は死や飢餓を前にすると善人ではいられないらしい。
なりふり構わず生きようとするのは人間として当たり前のことで、願わくばニワトリはそのような環境に一生ならないことを願っている。
なったとしたら、体力も無いしメンタルも弱いからすぐ死ぬかも!
オチはややこしかったが、世界観が好きだ。
